うつ病について
うつ病なんて他人事と思っていらっしゃる方もまだ多いかもしれませんが、そんなことはないんです。有名人がうつ病で自殺したなんていうニュースもよく耳にします。うつ病にかかっている人は人口の8%いると言われ、一生の内にうつ病にかかる人は15%といわれています。軽症の人も含めるともっと多いのではないかと言われています。また、自殺者が年間3万人近くいることも社会問題となっています。(図1)
年間自殺者の推移
自殺の原因として一番多いのがうつ病です。交通事故の死亡者が5千人近くにまで減少したことを考えれば、その何倍もの人が自殺しているというのは、社会の大きな損失です。行政だけでなく社会全体で対策を考えなければならないのはそのためです。静岡県でも富士市は「働き盛り世代のうつ・自殺予防対策モデル事業」として、ポスターやテレビCMなどで「パパちゃんと寝てる?」「二週間以上の不眠はうつかも」といったキャッチフレーズでうつ病の早期発見・早期治療を呼びかけました。
現代社会でストレスなしで生活している人はいないと思います。うつ病の原因はまだまだわからないことが多いのですが、ストレスがきっかけになることは確かです。働き盛りにうつ病が多いのはそのせいですが、子供や主婦やお年寄りもうつ病になります。学校でのストレス、家庭内の悩み事、一人暮らしの孤独感などがきっかけになります。うつ病は性格の問題ではありません。「なまけ」でもありません。むしろ真面目で人によく気を使う人がなりやすいのです。「心の風邪」という表現がよく使われます。つまりだれでもかかるけど、休んでお薬を飲めば治るということです。
うつ病の症状を知る
富士市のキャンペーンのように「眠れない」というのは本人にもわかりやすい症状です。ほかにも「食べられない」「だるい」「意欲がない」といった症状が最初に気づかれる症状です。いままで楽しくやれてきたことが楽しくなくなってきます。仕事に行くのもつらくなってきます。めまい、頭痛、動悸などの身体の症状が先行することもあります。自分で「うつかな?」と思って心療内科や精神科(メンタルクリニック)を受診する人も最近は増えてきましたが、「身体の病気かな?」と思って内科などに先に行ってしまう方が多いのも事実です。(図2)
うつ病患者の初診診療科
そういう方は検査をしても原因がわからず、きちんとした治療が受けられないままになってしまうこともあります。うつ病であることを認めたくなかったり、恥ずかしがったりする方も多いようです。うつはきちんと治療すれば治る病気です。でもそのままにしておくと、とてもつらい時期がずっと続くことになります。そばにいる家族もいっしょにつらい思いをします。最悪は自殺ということにもなりかねません。
うつ病の対処方法
当院ではメンタルクリニックがうつ病の治療にあたっています。良くお話を聞いて問題点を整理し、必要な検査をした上で、患者さんとよく相談して治療法を決めていきます。治療の二つの柱は休養とお薬です。最近のうつ病の治療薬は飲みやすく効果も早く現れ、副作用も少なくなっています。カウンセリングや認知行動療法といった治療法を組み合わせることもあります。認知行動療法というのは、マイナス思考におちいりがちなうつ病特有の思考パターンを自分で軌道修正していくトレーニング法です。少しでも「うつかな?」と思ったら早めに受診してください。もしご家族やお知り合いに「うつ病かも?」という方がいれば、受診を勧めてください。治った後で「あんなにつらい思いをしているくらいなら、もっと早く来れば良かった」とおっしゃってくださる方がいっぱいいます。ご家族もあなたの笑顔が戻ることを待っていると思いますよ。
メンタルクリニック 先任准教授 桐野 衛二
